ほけんの窓口グループの窪田泰彦会長兼社長の著書【「金融パーソン」はどう生きるか】の中で、素晴らしいフレーズを見つけた。
金融業界には、優秀な人たちが入ってきているのもかかわらず、入社して年次が経過するにつれ、
【内向き・上向き・後ろ向き】のちっちゃなエリートになってしまう。
社内ばかりを見る【内向き】、
上司ばかりを見る【上向き】、
批判や否定ばかりをする【後ろ向き】
になってしまう人が多く、大変残念でなりません。
私が感じていた事を、このフレーズで全て言い表してくれていて、感動した。
踊る大捜査線の青島刑事の有名なセリフを覚えているだろうか?
「事件は会議室で起こるんじゃない! 現場だ!」
金融業界は【 マーケットの主役はお客様 】という認識が欠如している。
リテール分野において、銀行員は、お客様本人と直接接する機会は少なからずや経験する。
ところが、損害保険会社員は、保険代理店の“ケア”業務が主流なので、契約者本人と接する機会は少ない。
(そもそも、マーケティング部門が存在していない。)
本社・本部が決めた販売目標やキャンペーン目標を達成することに“重き”をおいていては、いつまでたっても【お客様本位の販売】など出来ない。
この上意下達主義が改めない限り、現場は強くならない。
【お客様がどうかわっているのか?】【社会は何を求めているのか?】というものは、会社の中にいたって分かるはずがない。
何度も会議開催するよりも、【現場】に足を運んで、現場の人の話を直接聞いたほうが簡単だし早いし、正確な情報が入手できるはずだ。
『現場社員の声を聞き、施策に反映させる』『風通しの良い組織作り』といったスローガンを掲げたところで、トップ層に現場社員の声が届くには、各部門の責任者の【スタンプラリー】という関所をクリアーしなければならない。クリアーできた頃には“古臭い情報”になってしまっている。
当然のことではあるが、上意下達・下意上達ともにメリットとデメリットがあり、場面によって使い分ける必要があるので、バランス良くうまく織り交ぜて活用するのがベストではある。
このバランスを取る陣頭指揮をするのが、リーダーだ。
私は、かんぽ生命の不正販売問題は、起こるべくして起こったと思う。
日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の現トップの顔ぶれを見ると、それぞれが名だたる金融機関出身だ。
西日本新聞社や日経新聞等の報道によれば、昨年6月以降に、不正販売が疑われる事例に対する改善策や、保険料の二重払いへの返還対応が行われているので、不適切販売方法があったことは薄々とは感じていたはずだと書かれている。
しかし、7月31日の記者会見では、長門社長らは「不正を認識したのは今年6月」と語っている。
私が問題にしているのは、不正を認識した時期という問題ではなく、不適切販売方法があったことを、トップ3人の誰もが止められなかったということだ。
【いくら売上が伸びるのか?】【いくら儲かるのか?】といった『儲け主義』『拝金主義』の上意下達主義組織の金融機関出身者には、【自分の成功体験】【経験則】【過去の延長線上での発想】しか出来ない傾向が強い。
そして、権力や地位に安住したいという【保身】が、今まで業績向上に貢献してきたと言われていた販売手法について“ダメだ”と言う勇気がなかったのだろう。
【内向き】【上向き】【後ろ向き】の組織である限り、日本郵政グループの再建はあり得ないだろう。
窪田泰彦会長兼社長は、本書で、こうも語っている。
「我々は“保険”を売ることが仕事でない。」
「『”保険“という商品』をとおして『”安心“と”安全“』そして『”笑顔“と”幸せ“』をお届けすることが我々の仕事である。」
そして、
【あらゆる金融機関事業者は、それぞれの存在意義や役割などを、いま一度自分たちで問い直す時期が来た】と問題提議している。