私は、損害保険会社に勤務してきたが、職場で【マーケティング】という単語を耳にすることは殆どなかった。
商品開発部と営業推進部に【マーケティング機能】があったのかもしれないが、【マーケティング部】と名乗る部署は存在していなかったのは事実だ。
保険商品は、新しいビジネス・ニーズが発生すれば、新しいリスクが発生し保険商品ができる訳なので、マーケティングという概念自体が重要視されていなかったのかもしれない。
そして、損害保険会社(関係会社の生保会社含む)で【ユーザーの発掘からプレゼンそして契約締結まで】を実際に自分一人で行ったことがある社員はいない、といっても過言ではない。
代理店に「同行支援します」と偉そうに言っても、代理店がセッティングした客先に対する【商品説明】を代行すれ程度の支援しかできないのが実態だ。
モノを売るにあったって、極論すると【何を】【誰に】【どうやって】という3要素しかない。
図にあるように、保険会社は、代理店に【何を】を教えることしかできない。
代理店が知りたい【誰に】【どうやって】という事であるが、保険会社は『そこは、代理店の貴方が考えることでしょう。』というスタンスが当たり前だ。と言うか?販売ノウハウは持ち合わせていないのだ。
損害保険会社社員にとって、【会社での自分の評価】=【代理店の成績】という評価制度下にあるので、事務代行をやらざるを得ないだろうし、自分の目標達成には『見ざる聞かざる言わざる』を必要と考えがちだ。
私は、某大手信用金庫の生命保険獲得キャンペーンの勉強会に同席した時に、驚きの光景に遭遇した。
他生保会社主導も合わせると、年に2回以上生命保険キャンペーンが行われている訳で、職員も大変だ。
勉強会の司会者が講師(保険会社社員)を紹介し、講師が話し始めた。
「前回のキャンペーンでは、早期解約が多かった。そして、代筆は絶対にダメです。面前自署です!」
「法令遵守!コンプライアンス!ここが重要です!よろしくお願いします!」
「申込書の不備があるとお手数ですので、不明な事があったらコールセンターに電話してください。」
勉強会は、1時間弱であったが、販売のノウハウについては一切語られなかった。
続いて、某信金の営業本部長から職員に対して激励の言葉。
「わかっていると思いますが、全店舗目標必達です!」
この某信金での事例は、まさに、かんぽ生命と日本郵便の関係と同じなのではないだろうか?
日本郵便の現場では、現場は完全に実績至上主義に陥って、本部からの恫喝、低実績者の吊し上げは日常茶飯事。
組織単位のノルマがきつくなる一方で、契約インセンティブを勘定にいれないとやっていけないほど給与が抑えられるような仕組みになっていたとも言われている。
「顧客第一主義」「お客様の立場に立って」といった誰も反対しないスローガンを掲げている企業は多い。
ここでよく考えてほしいのは、既に実践できていて企業風土として定着していた事柄をスローガンに掲げる必要はないはずだ。
かんぽ生命保険の経営方針には次のように記載されている。
1. お客さま一人ひとりの人生によりそい、分かりやすい商品と質の高いサービスを提供します。
2. お客さまにより良いサービスを提供するため、お客さまと接する社員が力を発揮する態勢を整備します。
日本郵政グループの信頼回復は、金融機関からの天下り人事体制を一新しない限り、難しいでしょう。
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