しがらみと思惑の蠢く世界は嫌いだ


【しがらみ】は「引き留め、まとわりつくもの。じゃまをするもの」という意味を持つ。

漢字で書くと、「柵」と書く。そもそも「柵」は、川の中に杭を打ち並べて、その両側から柴や竹などをからみつけて、水流をせきとめるためのものである。その柵の様子から転じて、自分が生きていくなかで、自分にまとわりついて自由な動きを制約して束縛するものという意味で使われるようになったものらしい。

【思惑】には2つの読み方があり、読み方によって、それぞれ意味が異なる。

「思惑(おもわく)」・・・前々から考えている事柄、自分に対しての他人の考えや評価

「思惑(しわく)」・・・人が生まれながらに持っている欲、修行によって断ち切るべき煩悩

【忖度】は「他人の気持ちを推し量ること」「推察」という意味である。良い意味で「相手の気持ちを察して行動する」「相手の考えを自分の中で推測する」のが本来の意味と思うが、森友学園問題以降の「忖度」は、用法・使い方が変わってしまった言葉で、主に「上の者の意向を推し量る」ために使われることが多く、「おべっか・へつらう」といった形になっている。

世間では人々の行動が契約で縛られているわけではないのに、それぞれの人々が勝手にまわりの人たちの反応を読み合った結果として一定に行動をとり合っている。だから、みんなが本当に望んでいることと、ほかの人たちはこう思っているだろうと思われていることが食い違ってしまう可能性がある。

そのために、いろんなおかしな結果が生まれている。

「アビリーンのパラドックス」の話をご存知だろうか?

8月の暑い日、テキサス州に住んでいるある家族が団欒していた時のこと。父親は、みんなが、つまらなそうにしているのを見かねて、『夏休みだからどこか旅行に行かないか?と』提案する。そして53マイル離れたアビリーンへ旅行先が決まった。アビリーンには寂れたレストランが1軒あるくらいで他には何もないところだ。実はこのとき、誰もが その旅行を望んではいなかった。にもかかわらず、お互いが家族の中で自分だけ行かないとは言い出せずに、他の家族が行きたいなら行くしかないかと腹をくくって、渋々参加していたのだ。道中は熱く、砂埃が酷くて快適とはほど遠いものだった。結局、酷い旅行から帰ってきてから、提案した父親も含めて誰一人、 アビリーンへは行きたくなかったという事実が発覚した。

【アビリーン・パラドックス】は、集団思考の1つのかたちであり、多くの業績不振の企業にも当てはまる。自分たちが間違った方向に向かって進んでいることに気づいても、誰もそれを口に出さなければ、行き詰るまでみんながその現状を維持してしまう。人は集団の中では、他の人と異なる意見になることを嫌う。日本人は特にその場の空気を読もうとして、流れに逆らわないようにする傾向が強い。このパラドックスは会社の意思決定やちょっとした話し合いにおいても起きる可能性がある。

先般、個人事業主として生きてきた人々がそれぞれ自分一人で独自の会社を設立して業を営んできたが、急激な外部環境の変化で、生き残りをかけて、親しい同業者3社(S社<私とコンサル契約締結>とA社とT社)が合併して新法人を設立する。

顔見知りA社従業員から意見交換したいと誘われので、S社へのコンサルを行うにあたっての情報収集の意味もあって参加した。(参加者はA社従業員2名)。

私は第三者という立場から具体的施策提案を行ってみたが、「あの上司はこう思っているので実現難しいですね」という否定的発言がばかりで、「そのプランをやってみましょうか?」「こんな形なら実現できるのでは?」といった前向きと思える発言はでてこない。

私は的外れの提案をしてるかもしれないと思ったので、組織関係図や人間関係相関図を書きながら意図を確認したら、現状認識は間違っていないようだ。再度様々な角度から【合併する意義】を聞き出そうとしたが、明確な回答は返ってこない。

このA社従業員も【合併すること】しか知らされていなくて、合併後の【ビジョン・ミッション・バリュー】【戦略・戦術】が全く見えていないのだろう。

各論がサッパリわかっていないからか「S社との合併は必要なの?」という疑問がでる程度で、【合併後の営業戦術案】【即効性のある具体策】も全く出てこない。

多種多様なものが関わる時に、それぞれの【思惑】や【しがらみ】で動けなくなることがある。それに【忖度】と【遠慮】が加わって完全な【アビリーン・パラドックス】状態になっている。

十人十色といわれるように、ひとつの答えが微塵になるくらい、たくさんの真理がある。

そのためには、広い視野を持って、ひとつの答えにしがみつかずたくさんの考えを取り入れながら進めていかなければいけないが、理解するのも個人差があるので長い時間を要する。

【アビリーン・パラドックス】状態からの脱却は、とにかくまず【しがらみを払拭すること】から始めなければならない。

そして、常に自分が参加している目的を忘れずに、その目的を果たすための最善の選択をする【勇気】が必要である。


16回の閲覧

© TSB-Project

  • Facebookの社会的なアイコン

Presented by TSB-Project