保険代理店って必要なの?


世の中には数多くの代理店制度が存在している。「良い商品を持っていても販売力がない」という欠点を補うために制度を利用したのが始まりではないだろうか?

代表的な企業として、1923年(大正12年)に松下電器産業(現パナソニック)だ。代理店制度をスタートした理由は、大阪で普及し始めた砲弾型電池ランプを全国展開するためで、代理店募集方法は新聞広告を利用した。発売当初、問屋に敬遠されたランプも、6ヵ月後には代理店になるために保証金を出すというほどに、その評価は変わっていったそうだ。

また、世界のブリヂストンは1949年に代理店制度を実施している。その年の年末には122まで代理店を増やし、1963年には出資比率50%以上の代理店を「販売会社」に変更し、販売会社が36社に増え、全国網を築いた。代理店と言えば「広告代理店」が思い浮かぶが、電通が1936年に広告専業になったことで、当時、日本全国に240の広告代理店が、国策として強制的に企業合併が進められ、わずか12まで集約された。

いずれにしろ、日本の代理店制度は歴史が古く、全国展開をする上では必須の制度で、日本の小売業界の礎を築いてきたと言える。

損害保険業界もこの代理店制度で成り立ってきた典型的な業界である。

現状の保険業界は、新規の加入者は景気の波や保険料の値下げ競争で益々保険料は落ち込んでいき、『奪い合い市場』の【レッドオーシャン市場】だ。保険料・手数料の自由化によって保険の営業マンや代理店の経営者の懐を圧迫していき、手間が掛かり、儲からないビジネスになり、事業撤退の方が圧倒的に多い。ある程度従業員を抱えている大企業でなければ、保険代理店を維持することすら難しいと言える。

また、人件費が掛からないネット型・通販型保険の登場によって保険代理店は価格競争では勝てなくなり、IT化は保険の割引だけでなく、契約締結の方法にまで進んで『ペーパーレス化』を目的にしたタブレットでの契約締結が当たり前。そんな中、高齢代理店と呼ばれる昔ながらの地元密着型の保険代理店は、高齢の保険募集人が多く、システムの導入予算が確保できないことや、電子機器を使いこなすことができていない。保険会社にとっては頭の痛い問題だ。時代についていけていない経営者が多すぎる。

従って、保険会社が、ペーパーレス化できていない代理店にはペナルティを課して、成長が見込まれる規模の大きい代理店との合併を勧めていくのは当然のことである。顧客の囲い込み・資本なども含め、余裕のある代理店を非常に優遇し、「非効率代理店数をどれだけ減らせるか」という部分が人事考課の一つとされても不思議ではない。自社の保険代理店を減らし、強い代理店を育て、自社同士の顧客の奪い合いから『他社の顧客を奪う』ことへ完全に営業戦略がシフトする。この動きは1~2年で加速するのは間違いない。

そんな状況下、先般、損害保険代理店の協会で講演させてもらう機会を頂き、懇親会では余興のひとつとしてトークセッションもやらせてもらった。

参加者の割合は、高齢の代理店経営者が50%と若手従業員が30%、保険会社社員が20%という状況だっただろうか?講演会の反応、懇親会での談笑や若手従業員とのSNSのやりとりで感想や意見を聞かせてもらった上で私なりの分析次の通り。

1.「自分は大丈夫」とでも思いこんでいる感じの時代遅れの老齢経営者

2.ヤバいと認識しているのだろうが行動に移せない若手従業員

3.代理店に対して問題の本質を語らない保険会社社員

地方都市での講演会だったので地域性もあるだろうが「この業界ヤバい」「危機感が欠如している」というのが正直な感想だ。保険更改によって代理店手数料は目減りしても固定で入ってくるので、代理店を辞めるのを躊躇してしまっているのも理解できない訳ではないが、目減りが進行していき経営が苦しくなった経営困難な状態からだと【合併や提携ができない】【足元を見られ自社の顧客を丸呑みされてしまう】という可能性が高いとは考えないのだろうか?

近い将来、保険代理店は今よりも更に6〜7割以上がなくなると考えられている。その理由は簡単で、IT化が更に進み、ネット型通販よりも進化したビジネスモデルやシステムが完成すれば営業マン自体が不要になってしまうからで、実際多くの経済誌で今後『縮小・なくなる職種』に保険代理店業は常に上位にランクインしている。ビジョンが描けていない老齢損害保険代理店の今後の進むべき道は限られていて、早い段階で大型代理店との提携を行い、保険業から撤退する方法が一番スタンダードなのかもしれない。

保険会社に勤務している時は「この対代理店戦略は冷たいな」と感じていたことが多々あったが、代理店を統廃合していくという保険会社の戦略は概ね間違ってはいない。ただ、具体的な戦術が不明確で、問題の先送り体質が抜けないので「現実と本音そして本気度」が、危機感が欠如した老齢経営者に対して伝わっていない。保険会社の代理店に対する「煽てる戦術」を止めないと双方ともに無駄な時間を費やすだけ。マーケットは待ってくれない。

そして、自立して明確なビジョンを持っている若いニューリーダーが牽引していかない限り保険代理店業界の未来は明るくないと断言できる。


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