~企業スローガンは「できていないこと」のカミングアウト?~


某有名大企業にお勤めのMr氏(以下Mr と略す)から面白い話を聞いた。

Mrは3年後には定年退職迎えるので、数年前から起業しようと準備している。定年延長制度でこの会社に残留する気はなく、いつ辞めてもいいと思っているようだ。この企業におけるMrのポジションは、年下の上司・同僚・派遣社員・パートさんで構成される組織の一員として形式的には属しているものの、これといったミッションがあるわけでもなく、所謂【閑職】と言ってもいい。それ故に客観的にこの組織を眺めることが出来るので、嫌なところが目に付くそうだ。

1.電話の相槌で『ええ』?

今年結婚したスレンダーでクールビューティーな女性社員がスマホでお客さんと会話している。就業時間前であったのでオフィスは比較的静かだったので彼女の声が響き渡った。『ええ』『ええ』『ええ』の連呼だ。オッサンであるMrにとっては『ええ』という相槌は、自分と対等か目下の人に使う言葉なので、お客様や目上の人に使うのはNGで『はい』が正しい相槌と教わっていた。Mrは『ええ』という相槌は使ったことが無いので、『ええ』の連呼は新鮮と言うかビックリだった。彼女の電話終了後、周りの上司や先輩から注意されている感じもない。上司の面白くもないダジャレに愛想笑いをしているようだった。

Mrは、この仲良しクラブ雰囲気に耐えられずに彼女にメールしてしまったのだ。文面は次の通り。

「『ええ』という相槌はお客様には使わないほうがいい。ご参考URLはこちらをご参照https://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20120418/122664/」

数時間後彼女から「ご指摘ありがとうございました。」という返信メールが届いそうだが、その後は、彼女はMrを避けるようになり挨拶すらしなくなったそうだ。

2.新卒新入社員からの言葉

Mrの息子さんよりも若い赴任して2か月程度の新卒新入社員が、代理店での勉強会を一人で開催しているという話を聞いた。本来は先輩社員が指導員として数か月は同行するなどして面倒を見るのだが、先輩社員が自分の仕事でアップアップなので、所謂【放任状態】。そこで心配したMrは新入社員に声を掛けた。

 Mr「代理店で勉強会やってるそうだけど、やり方は教わったの?」

 新人「いえ。何も教わってないっす。まあ自己流、オレ流っす。」

 Mr「プレゼンは【伝える】ではなく【伝わる】のが重要だよ。講習会のやり方とか勉強した?」

 新人「勉強してません。」

 Mr「プレゼンスキルとかは勉強したほうがいいよ。」

 新人「そう仰いますが、Tさんは何かやってんすか?(見下した感じで)」

 Mr「君は、プレゼン以前に目上の人との会話の仕方を学んだほうがいいかもね。頑張ってね!」

頭から湯気がでているMrは怒りが収まらず、新入社員が外出したのを確認して、指導員である先輩社員のところへ向かった。「君は新入社員にどんな教育してるの?放任主義もいいけど、ビジネスの基礎は教えてあげないと。自分の事で精一杯だったら『新入社員の指導員を誰かに変えてください』って手自らを挙げるべきだよ」と言い放ってしまった。

翌日、新入社員から、まったく心がこもっていない形式的なお詫びメールが届いたのが唯一の救いで、指導員の先輩社員もMrを避けるようになり挨拶すらしなくなった。

3.転勤者の挨拶でビックリ仰天

Mrの会社では、転勤での転出者は現任地の最終日に全員の前で、送別品授与とスピーチするのが慣例となっている。今回の転出者は高飛車・自信満々の中堅男性社員だ。彼の送別セレモニーが始まった。

後輩にあたる女性社員が感謝の言葉を伝え送別品を渡した。さあ、彼のスピーチがスタートだ。

「本日が最終日です。お世話になりました。この大きな送別品は【湯沸かしポット】です。ここに置いていきますので、カップラーメンやコーヒータイムに使ってください。皆さんへの感謝の気持ちです。」

 <転出者は「決まった!」という感じで悦に入っているようで【ドヤ顔】だ。>

一瞬の静寂後、他部署の上司からの「お~~」という声とともに拍手に包まれ、全員での写真撮影に移っていった。

Mrは、この会社に30年勤務していて、送別品は受け取って、転出者が自腹で別のプレゼントを置いていったシーンの経験はあるが、送別品自体を置いていくというのは前代未聞の事件との遭遇だった。

送別品は残るメンバーが、お金を出し合って感謝の意を込めて転出者に送るもので、その送別品を置いていくというのは【人の気持ちを踏みにじる行為】としか思えなかった。送別品は残る後輩が買いに行ったのだろうし、残るメンバーも直属の上司もグルだ。Mrは、この光景に恐怖すら感じたらしい。

翌日同年代のパート社員のオバサンに本件を聞いてみたところ「オバサン全員、ドン引きよ。でも、あの男ならやりそう。残りのメンバーもアホね(笑)。でも、この愚かさを指摘する奴は損するだけ。知らん顔で通すのが賢い生き方。」という言葉でMrの恐怖感が更に増していったそうだ。

4.Mrからの話に対するコメント

この3つの事例を聞いた小生はMrに「こんな組織からは1日でも早く辞めましょう!」と言いたかったが、ビートたけし師匠の言葉を贈ることとした。

<自分への戒め>

若いのが作法を学ばないのは、手本になる大人がいないからだ。少なくとも男にとっての作法は、ある種の憧れだったり、「あのときのあの人は格好良かったな」という記憶だ。身近にそんな人がいたら、強制なんかされなくたって真似したくなる。鮨の食い方にしても、酒の飲み方にしても、昔はそうやって格好いい大人の真似をして覚えたものだ。そう考えると、年寄りが「いまの若いのは作法がなってない」と言うのは、天にツバするのと同じことかもしれない。

<後輩に贈る言葉>

作法というのは、突き詰めて考えれば、他人への気遣いだ。具体的な細かい作法をいくら知っていても、本当の意味で、他人を気遣う気持ちがなければ、何の意味もない。その反対に、作法なんかよく知らなくても、ちゃんと人を気遣うことができれば、大きく作法を外すことはない。駄目な奴は、この気遣いがまったくできていない。人の気持ちを考えて行動するという発想を、最初から持っていないのだ。

5.後日談

Mrとは友人でもあり、今後のお互いのビジネスをサポート支え合う同志なので会食時に聞いてみた。

 小生「その後、後輩との関係はどう?」

 Mr「何も変わらないよ。誰も寄ってくることはないね。面倒臭いオッサンだって。ハハハ(笑)」

 小生「日本のエリート大企業って凄いね。」

 Mr「凄いよ。会社のスローガンは【日本で一番『人』が育つ会社】だよ」

 小生「ブッーー(ビールを思わず噴き出した)」

 Mr「企業のスローガンは、できてないから掲げるんだよ。心地よい言葉で誰も反対しないやつを。」


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