【割れ窓理論】の実証実験

最終更新: 1月1日




私は、子供のころから40歳手前までは、とても掃除が苦手だった。なぜ苦手だった掃除をするようになったかというと、単身赴任生活が始まったからである。きれいに整った部屋に暮らすと非常に気持ちがいい。自分の環境をきれいにしたいと思うようになった。奥さんや友達から掃除や片づけの原理原則を教えてもらい、掃除を始めた。ある一定の水準に達するまでは上手くいかず大変だったが、ある日を境に掃除がうまくできるようになった。一度「掃除ができている状態」を自分で作れるようになると、あとはそれを進化させ、維持していくことになるので、グッと楽になる。それは、私が生まれ変わったのではない。原理原則を知ってそれを実行しただけ。一人暮らしで、他人が部屋にやってくるわけではないが「自分の部屋は機能的でいたい」ことと、掃除もディスプレイも自分の思い通りにやればいいから長続きしているのかもしれない。

神社やお寺に行くと、清々しい、そして凛とした気持ちになる。その理由は、掃除が行き届いていることもあるが、それ以上に「モノが極端に少ない」からだ。掃除が苦手な人の家のほとんどが、その正反対だ。モノが多すぎて溢れている状態で、以前の私の部屋も、いつもモノが溢れている状態だった。床の上や机のうえに雑然と置かれたさまざまなモノが積み上がっているなら、それは明らかにモノが多すぎる状態だ。モノが多すぎると、モノの「定位置」が決められない。収納する場所が決まらないから、いつまでたってもそのモノは机や床の上に置きっぱなしになる。溢れているものを収納する家具を買うのではなく、収納できる範囲にまでモノを減らそう。どんなに愛着があったとしても、段ボールに入れて押し入れに詰め込んだままのコレクションに、果たして意味があるだろうか。大切なコレクションなら、数を絞って厳選して、その代わり美しく飾れる分だけを残す。

一定レベルまでモノが減ってくると、収納スペースにすべて収まるようになってくる。すると、床の上やデスクの上に雑然とモノが積み上がっているという状態は回避できるようになる。そこで、すべてのモノの定位置を決めるのだ。ひき出しの一番上にはこれ、二番目にはこれ。食器棚の上の段はこれ、下の段はこれ、と、すべての持ち物の定位置を決めるのだ。定位置を決めて、すべてのモノを定位置に格納する。「定位置」というからには、モノを使ったら必ずその場所に戻すように心掛ける。新しくモノを買ったりもらったりして、モノが増えて収納が不足し、定位置にモノが入らないなら、入るまでモノを減らす。収納を増やすことを考えるのでなく、自宅でもっとも貴重なのは、「何もない、清潔で美しい空間」だ。

【割れ窓理論】。簡単に言うと「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなくすべて壊される」というもの。

ニューヨークのジュリアーニ前市長は、落書きを徹底して消して掃除し取り締まりを強化していった。すると街はきれいになり、殺人事件は1/3、発砲事件は1/4になった。治安が回復し、中心街も活気を取り戻し、住民や観光客が戻ってきた。ビジネスでもこの理論は活用されている。

スティーブ・ジョブズがアップルに戻ってきて、まず対処したことは停滞ムードの社風を一新することだった。彼が復活する前の社内は遅刻が常態化し、ペットを持ち込み犬と遊んでいる社員までいたという。最初に手をつけた具体的なアクションは【掃除】で、それは、働く"環境"を徹底的に変えたことである。

東京ディズニーランドでは、ささいな傷をおろそかにせず、ペンキの塗りなおし等の修繕を惜しみなく夜間に頻繁に行うことで、従業員や来客のマナーを向上させることに成功している。

音楽好きの私にとってLPレコードは最愛のコレクションである。CDや音楽配信が主流になり、レコードプレーヤーも故障してしまっている現状で、レコードで音楽を聴くこともない。段ボールに入れて押し入れに詰め込んだままのコレクションにすぎない。転勤の都度、奥さんから「捨てていい?」と聞かれても「アホか!俺の青春だ!」と叫びながら喧嘩したものだ。

しかしながらLPレコードジャケットは、カッコいいものが多い。そこで、先週末我が家をLPレコードジャケットでディスプレイした。これは、私流の【割れ窓理論】を応用である。なぜなれば、息子二人が自分たちの部屋ですら掃除をまったくしない、所謂『豚小屋』状態。

ディスプレイは完成後、リビングでビールを飲んでいたところ、玄関いる長男の「掃除しなきゃね」というフレーズが聞こえた。月に数日しか我が家には戻らない私は、部屋の変化がわかるので【割れ窓理論】実証実験の結果を知る次回帰省の楽しみだ。


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